昨今、日本の中小企業において「後継者不在」は深刻な社会問題となっています。その解決策として、また企業のさらなる成長戦略として、今かつてないほど「M&A(企業の合併・買収)」の需要が高まっています。
そんな中、M&Aの実務スキルを証明する資格として注目を集めているのが、日本経営管理協会(JIMA)が主催する「M&Aスペシャリスト」です。
今回は、この「M&Aスペシャリスト」資格について、その概要から難易度、メリットまで徹底解説します。M&A業界への転職を考えている方や、コンサルタントとしての幅を広げたい方はぜひ最後までお読みください。
1. M&Aスペシャリストとは?
「M&Aスペシャリスト」は、一般社団法人 日本経営管理協会(JIMA)が認定する民間資格です。
この資格の最大の特徴は、単なる知識の暗記ではなく、「実務で通用する専門性」を重視している点にあります。M&Aのプロセスは非常に複雑で、法務、税務、会計、さらには人間心理が絡み合う高度な交渉術が求められます。本資格は、それらを体系的に学び、プロフェッショナルとして活動するための「通行証」のような役割を果たします。
資格の歴史と信頼性
日本経営管理協会は、経済産業省の認可団体である「全日本能率連盟」に登録されており、長年にわたって経営管理の専門家を育成してきた歴史があります。その中の一環として誕生した本資格は、業界内でも一定の評価を得ており、商標登録(第5266010号)もされています。
資格取得支援講座
この資格のユニークな点は、4日間にわたる集中講座を受講した後に試験を受けるスタイルが一般的であることです。 独学でテキストを読み込むだけでは理解しにくい「現場の空気感」や「最新の判例・事例」を、第一線で活躍する講師から直接学べる点は、受験者にとって大きなメリットと言えます。
M&Aスペシャリストを取得する「5つのメリット」
高い費用と時間をかけてこの資格を取る価値はどこにあるのでしょうか?
体系的な知識が最短で身につく
M&Aは独学が非常に難しい分野です。法務、税務、会計をバラバラに勉強しても、それらがどう結びつくのかが見えにくいからです。認定講座を通じてこれらを横断的に学ぶことで、短期間で「M&A脳」を構築できます。
履歴書での強いアピール力
特にM&A仲介会社や、銀行のソリューション営業部門への転職を目指す場合、「M&Aに関心があります」と言うだけの人と、「M&Aスペシャリスト資格を持っています」と言う人では、説得力が雲泥の差です。
専門家ネットワークの構築
講座の受講生同士や講師とのつながりができるのも大きな魅力です。資格取得後も、協会が主催するイベントや勉強会を通じて、最新のトレンド(AIを活用したマッチングや海外案件の動向など)をアップデートし続けることができます。
中小企業の「事業承継」に貢献できる
現在、日本の中小企業の多くが廃業の危機にあります。この資格を持つことで、親族内承継ができない企業に対し、第三者承継(M&A)という選択肢を提示し、日本の産業を守る社会的意義のある仕事に直結します。
コンサルティング単価の向上
士業(税理士や中小企業診断士)の方であれば、従来の顧問業務に加えて「M&Aアドバイザリー」という高単価なサービスを提供できるようになります。
M&Aスペシャリストの資格試験について
分類
民間資格
受験資格
誰でも受験できます。
申込期間
試験日の2週間前
申込方法
インターネットから申し込みできます。
試験日
年2回実施しています。
- 8月上旬
- 12月上旬
受験料
- 受講料:77,000円(消費税込み)
- 検定試験料:11,000円(消費税込み)
- 受講+検定試験合計:88,000円(消費税込み)
試験内容
M&Aスペシャリスト試験では、以下の5つの領域が中心となります。
- M&A実務
ソーシング(案件探し)からマッチング、基本合意、デューデリジェンス(資産査定)、最終契約、PMI(統合プロセス)までの一連の流れ。 - 法務
会社法、労働契約承継法、独占禁止法など、企業再編に関わる法律知識。 - 会計
企業結合会計、事業分離会計など、合併や買収時の仕訳や評価。 - 税務
組織再編税務、所得税、法人税、消費税の取り扱い。特に「適格・非適格」の判断は重要です。 - 職業倫理
守秘義務の徹底、利益相反の回避、顧客への誠実義務など。
合格率
70%程度
M&Aスペシャリストの書籍
M&Aスペシャリストの書籍を以下のリンクから検索することができます。
役立つサイト
- 一般社団法人 日本経営管理協会 (JIMA)
主催団体のサイトです。試験の最新情報をチェック出来ます。
あなたのキャリアに「専門性」という武器を
「M&Aスペシャリスト」は、取得して終わりの資格ではありません。むしろ、そこからがスタートです。
この資格で得た知識は、転職、昇進、あるいは独立といったあなたのキャリアにおける大きな転換点において、必ず強力な武器となります。特に「経営の根幹に携わりたい」「社会貢献度の高い仕事がしたい」という熱意がある方にとって、これほど挑戦しがいのある分野は他にないでしょう。
決して安くない自己投資かもしれませんが、M&A業界のインセンティブや将来性を考えれば、そのリターンは計り知れません。

