情報処理技術者試験の中でも最高難度かつ最高峰の資格として知られる「ITストラテジスト試験（ST）」について、その魅力、難易度、そして合格するための具体的な戦略まで、徹底的に掘り下げて解説していきます。
ITストラテジスト試験とは
ITストラテジスト（Information Technology Strategist）とは、一言で言えば「企業の経営戦略を実現するためのIT戦略を立案し、推進する最高責任者」です。
現在のビジネスにおいて、ITは単なる業務効率化ツールではなく、企業の競争優位性を確立するための戦略的な武器です。ITストラテジストは、まさにその武器を設計し、使いこなすための司令塔の役割を果たします。
ITストラテジストに求められる役割
ITストラテジスト試験では、次のような役割を担える人材が想定されています。
- 経営戦略を理解した上でIT戦略を立案する
- 事業目標を達成するためのIT投資計画を策定する
- DX（デジタルトランスフォーメーション）を推進する
- システム全体を俯瞰し、最適なIT活用を提案する
- 経営層・事業部門・IT部門をつなぐ調整役となる
つまり、「システムを作る人」ではなく、
「なぜそのシステムが必要なのか」「どんな価値を生むのか」を説明できる人が求められます。
資格の価値とキャリアへの影響
ITストラテジスト試験に合格し、その知識とスキルを証明することで、キャリアにおいて計り知れない価値が生まれます。
市場価値の飛躍的な向上
ITコンサルタントやCIO（最高情報責任者）補佐、上級PM（プロジェクトマネージャー）といった、より高度で責任の重いポジションへの道が開けます。
高度情報処理技術者試験の中で最もビジネス・経営に直結する資格であり、企業からの評価は非常に高いです。
知識体系の確立
経営戦略、業務改革（BPR）、事業ポートフォリオ、技術動向、セキュリティ、ITガバナンスなど、経営とITをつなぐ広範な知識を体系的に学ぶことができます。
高度な論理的思考力・表現力の証明
試験の核となる論述試験（午後II）を突破することは、「複雑な課題を分析し、最適な解決策を論理的に構成し、説得力ある文章で表現できる能力」の証明になります。これは、経営層への提言や大口顧客へのプレゼンテーションに直結するスキルです。
ITストラテジスト試験の資格試験について
分類
国家資格
受験資格
誰でも受験できます。
申込期間
１月中旬
申込方法
インターネットで申し込むことができます。
試験日
４月
合格発表
7月中旬
受験料
7,500円
試験地
全国主要都市
試験内容
午前Ⅰの出題範囲
応用情報技術者試験の午前試験の出題範囲と同様
午前Ⅱの出題範囲
| 分野 | カテゴリ |
| テクノロジ系 | セキュリティ |
| ストラテジ系 | システム戦略 システム企画 経営戦略マネジメント 技術戦略マネジメント ビジネスインダストリ 企業活動 法務 |
午後の出題範囲
| 分野 | カテゴリ |
|---|---|
| 業種ごとの事業特性を反映し情報技術（IT）を活用した事業戦略の策定に関すること | 経営戦略に基づく IT を活用した事業戦略の策定、IT によるビジネスモデルの開発提案、業務改革の企画、新製品・サービスの付加価値向上の提案、システムソリューションの選択、アウトソーシング戦略の策定 など |
| 業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること | 業務モデルの定義、情報システム全体体系の定義、情報システムの開発課題の分析と優先順位付け、情報システム基盤構成方針や標準の策定、システムソリューション適用方針の策定（ERP パッケージの適用ほか）、中長期情報システム化計画の策定、情報システム部門運営方針の策定 など |
| 業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること | システム化構想の策定、業務のシステム課題の定義、業務システムの分析、業務モデルの作成、業務プロセスの設計、システム化機能の整理とシステム方式の策定、システム選定方針の策定（システムソリューションの適用ほか）、全体開発スケジュールの作成、プロジェクト推進体制の策定、システム調達の提案依頼書（RFP）の準備、提案評価と供給者の選択、費用とシステム投資効果の予測 など |
| 事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること | 製品・サービス・業務・組織・情報システムの改革プログラム全体の進捗管理、情報システム基盤標準やシステムに関する品質管理標準の標準化推進、改革実行のリスク管理と対処、システムソリューションの適用推進、システム活用の促進、改革プログラムの効果・費用・リスクの分析・評価・改善 など |
| 組込みシステム・IoT を利用したシステムの企画，開発，サポート及び保守計画の策定・推進に関すること | 通信・情報・アーキテクチャ・ヒューマンインタフェース・ストレージ・半導体・計測・制御・プラットフォームなどの技術動向分析、製品市場動向・社内技術評価などを踏まえた製品戦略策定，知的財産・規格・法令・製品の安全性や環境対策などへの考慮点の整理、リスク分析、調達方針の策定、経営戦略との整合性評価、要求の確認と調整 など |
試験方式
| 時間 | 形式 | 問題数 | |
| 午前Ⅰ | 50分 | 多肢選択式 | 30問 |
| 午前Ⅱ | 40分 | 多肢選択式 | 25問 |
| 午後Ⅰ | 90分 | 記述式 | 4問中、2問を選択して回答 |
| 午後Ⅱ | 120分 | 記述式 | 3問中、1問を選択して回答 |
合格率
１５%前後
勉強時間・勉強方法
勉強時間
150〜200時間程度
勉強方法
独学でも可能ですが、通信講座などスクールで勉強した方が効率的に勉強を進めることが出来ます。
ITストラテジスト試験の書籍
ITストラテジスト試験の書籍を以下のリンクから検索することができます。
役立つサイト
- 独立行政法人 情報処理推進機構
主催団体のサイトです。試験の最新情報をチェック出来ます。
ITストラテジストは、あなたの「IT人生の集大成」
ITストラテジスト試験は、単なる知識を問う試験ではありません。これまでのあなたのITキャリアの集大成であり、技術と経営を結びつける架け橋としての資質を問うものです。
合格は決して簡単ではありませんが、その道のりで身につく論理的思考力、課題分析能力、そして高度な専門知識は、あなたのキャリアを一段、いや二段、三段と押し上げるでしょう。
この最高峰の資格に挑戦する皆さんの努力が実を結ぶよう、心から応援しています！
